ホテルに宿泊した経験のある方なら、ドアノブに掛けられた「起こさないでください」や「掃除してください」という札を見たことがあるでしょう。
一見些細に思えるこれらの札ですが、実はあなたの快適な滞在を左右する重要なアイテムなのです。
適切に使用すれば、遅くまで寝れたり、清潔な部屋で過ごしたりできます。
そこで今回の記事では、ホテルの札の意味や正しい使い方、そして忘れた場合の影響について詳しく解説します。
ホテルでよく見る2枚の札(プレート)の意味・役割とは?
ホテルの客室に入ろうとすると、まず目に入るのが「Please Don’t Disturb」と書かれた札です。
この札は、ドアノブに掛けられていたり、カード式でドアに貼られていたりします。
多くの場合、英語と共に「起こさないで下さい」という日本語表記が添えられています。
「Please Don’t Disturb」を直訳すると「邪魔しないで下さい」となりますが、日本語では「起こさないで下さい」と表現されるのが興味深い点です。
この札は、ハウスキーピングなどのスタッフに客室への立ち入りを控えてもらいたい時に使用する便利なアイテムです。
ホテル業界では「ドン・ディス・カード」(DDカード)と呼ばれることもあります。
対になるのが「Please Make Up」や「Clean Up Please」といった、部屋の清掃を依頼するメッセージが書かれた札です。
これら2枚でワンセットとなっています。
使い方は簡単で、部屋に入られたくない時は「Please Don’t Disturb」を、掃除をしてほしい時は「Please Make Up」を廊下側のドアノブにかけておくだけです。
これらの札は、言葉を介さないコミュニケーションツールとして機能します。
ちなみに、最近では環境への配慮や連泊客のニーズに応えるため、「清掃不要」「(アメニティの)交換回収のみ」といった新しいオプションも登場しているのです。
これらは、環境問題への対応という観点からも評価されています。
「掃除してください」の札(プレート)を忘れたら、ゴミは捨ててもらえない?
多くのホテルでは、「掃除してください」の札(プレート)がない場合、むやみに客室に入ることを避けます。
そのため、連泊中に「掃除してください」の札を忘れたら、ゴミを捨ててもらえない可能性も高いです。
とくに連泊中の部屋は、宿泊客のプライベート空間として扱われ、指示がない限り入室を控える方針のホテルも少なくありません。
しかし、「掃除してください」の札がなくても、出かける前にフロントに声をかけたり、戻ってきてから連絡したりすること(早い時間帯の場合)で、柔軟に清掃サービスを依頼できます。
ちなみに清掃サービスを依頼しても、テーブル上のゴミらしきものは、トラブル防止のため基本的にそのままにされます。
ゴミとして処分してほしいものは、ゴミであるとはっきり判るように、ゴミ箱に入れておきましょう。
ゴミが多い場合は、まとめて部屋の端に置いておくなどの工夫も効果的です。
2つの札(プレート)が表裏一体ではなく、別々になっている理由
ホテルの札(プレート)について、多くの人が疑問に思うのが「なぜ両カードが別々になっているのか」ということです。
確かに、資源の有効活用や効率性の観点からは、表裏一体の1枚のカードにすることが理にかなっているように思えます。
しかし、実際にはいくつかの重要な理由があって、多くのホテルでは別々のカードを採用しています。
- イタズラ防止
人気ドラマ「HOTEL」のシーンにあったように、ほかの客室のドアノブに掛けられた「Please Don’t Disturb」カードを裏返して「Please Make Up」にするというイタズラを防ぐため - 明確な意思表示
表裏一体だと、カードが落下した際にどちらの表示だったのかが分からなくなってしまうため - 柔軟な使用
別々のカードであれば、清掃は必要ないが起こしてほしくない場合など細かなニーズに対応できるため
最近では、これらの問題を解決するための新しい方法も登場しています。
- マグネット式カード
落下の心配が少なく、取り付けや取り外しが容易です。 - 電子式スイッチ
とくに高級ホテルで採用されており、カードの紛失や落下の心配がありません。
ホテル業界は常に改善を重ね、より良いサービスを提供しようと努力しているのです。
【コラム】米国のホテルではDDカードのあり方が問われている
アメリカでもホテルのプレート(DDカード)のシステムは、ゲストのプライバシーと快適さを守るために長年使用されてきました。
しかし、2017年10月にラスベガスで発生した悲惨な銃乱射事件は、このシステムの潜在的な危険性を浮き彫りにしました。
この事件では、犯人のテロリストが連泊中に「Please Do not disturb」の札を常時掲示し、ホテルスタッフを部屋に入れないようにしていました。
これにより、テロの準備を進められたのです。
With help from hotel bellmen, he brought five suitcases to his room on September 25, seven on the 26th, two on the 28th, six on the 30th, and two on October 1.
On September 30, he placed “do not disturb” signs on the doors of both rooms.
(ホテルのベルマンの助けを借りて、彼は9月25日に5つ、26日に7つ、28日に2つ、30日に6つ、10月1日に2つのスーツケースを部屋に持ち込んだ。
9月30日、彼は両方の部屋のドアに「起こさないでください」という札を置いた。)
2017年ラスベガス・ストリップ銃乱射事件|ウィキペディア英語版
この事件を受けて、アメリカのホテル業界では安全対策の見直しが始まりました。
対応策の例
- 「Please Do not disturb」の使用時間制限(24時間または48時間)の導入
- 定期的な客室確認の義務化
- DDカードのシステムを廃止検討
これらの対策は、ゲストのプライバシーと安全性のバランスを取ろうとする試みです。
しかし、ホテルの基本的な使命である「快適な滞在の提供」と、「犯罪の温床となる危険性の排除」という、相反する要求のバランスを取ることは容易ではありません。
この問題は、ホテル業界全体で継続的に議論され、改善策が模索されています。
宿泊客としては、これらの変更がプライバシーに悪影響を与える可能性があることを理解しつつ、社会の安全性向上のための必要な措置であると理解を示すことが重要です。
コメントを残す